最近は現場のレビューを続けていますが、2018年に初更新ということで、昨年末に訪れた現代美術家の杉本博司さんによる江之浦測候所の写真を掲載します。
江之浦測候所は杉本さんによる現代美術と建築のミュージアムです。
縄文時代から現代まで、時空を超えて異なるスタイルの建物が共存する、建築とランドスケープとインスタレーションのはざまにあるような不思議な施設です。
100mギャラリー。大谷石の壁と柱の無いガラス面が対照的です。
ギャラリーを外から見るとこんな感じです。
海に向かってせり出していて、小田原の海景を一望できる場所になっています。
光学ガラスによる能舞台。円形劇場のようになっています。
近づいてみるとガラス板のきらめきや懸造の架構がよくわかります。
能舞台の脇にある鋼製の隧道。冬至の日の出方向に軸線が通っています。
中の様子。軸線の先には海が広がっています。
千利休による茶室「待庵」の写しである茶室「雨聴天(うちょうてん)」。
残念ながら中には入れないのですが、利休の趣きは感じられます。
もとは根津美術館にあった門。
杉本さんが買い取って移築したそうです。
ざっとダイジェストに写真を羅列しただけですが、なかなか見応えのある施設でした。
それぞれの施設にロジカルな関連性がある訳ではなく、数寄者の普請道楽を体現しているような感じです。昔からある、戦前の富豪が設立した私設の美術館=根津美術館、五島美術館、静嘉堂美術館等々は、それぞれ出色のコレクションと緑豊かな庭園を有していますが、それらの現代版、に近いかもしれません。作家兼オーナーである杉本博司ワールドの具現化、といった感じでしょうか。
ただ、テーマとしてはアートや人間の意識の起源の深層に迫りたい、という杉本さんの
作家としての思索があり、時代性や様式はバラバラでありながらもそのテーマ性を意識しながらつくられた施設なのかなあと思いました。そういう意味ではやはり施設全体がひとつの作品であって、ひとりの作家によって細やかにつくられた稀有な施設であると思いました。
ここしばらく、投稿回数も少なく簡素な記事が多かったのですが、今年はブログも充実させてゆきたいと思います。
よろしくお願いいたします。