2021/12/30

実物大ガンダム

 気づけば2021年も残すところわずかになりましたが、この一年を振り返ると外出が難しい期間が長かったので、ご多分に漏れず、ほぼ家と事務所、スーパーを往復する毎日でした。


そんな中で、自分的に記憶に残った今年のトピックはというと、横浜で公開されている「実物大の動くガンダム」の見学に行ったこと、がその一つとして挙げられます。


この動くガンダムは昨年暮れから公開されていて、来年3月まで期間限定で公開されています。

ちょうどコロナ禍の自粛期間のタイミングにずっと重なっていたので、行くに行けない状況が続いていたのですが、先日ようやく観に行くことが出来ました。




ゆっくりながら動くガンダム。

整備場での可動試験をイメージした設定になっているようです。

ガンダムは約18mなので、建物でいうとだいたい6階建てに相当します。脇のデッキに人影が見えますが、その巨大さがよくわかります。





夜間はこんな感じでライトアップされています。

昼間もいいですが、夜間だと非日常感が強くなって、よりフィクションの世界に浸れる感じです。







脇のデッキから見たところ。ガンダムの腰のところに支持アームがついていて、背後の黒い重機によってコントロールされて移動しています。


出来うるなら完全に自立して歩く姿を見たい、、、ものですが、荷重的に18mを歩かせるのが非常に難しいのと、地震や風圧に対する安全性からこういう形になったようです。確かに、18mの巨人が万一転倒したら、、、それだけで大事故のニュースになりそうです。


技術的には遊園地のアトラクションに近い気がしますが、重機と建築の技術をベースに各種の演出技術を組み合わせてつくられた、という印象です。

プロジェクトを統括しているのは乃村工藝社という、展示施設やイベント、インテリア等の分野で有名な施工会社が担当していますが、ケンチク系の会社が統括しているというのはこの実物大ガンダム、というプロジェクトの技術的な属性を象徴している気がします。


まあ、そういう意味ではケンチク的にも大変興味深い点があったのですが、やはり40年の年月を経てもなお人々を惹きつける魅力がある、というのは、ガンダムというロボットのデザイン自体が古臭さを感じさせない、シンプルなロングライフ・デザインであるから、という点も一因にあるかなと思います。

ガンダムのデザインをしたのは、大河原邦男先生というアニメのメカ・デザインの巨匠の方ですが、美大でデザインを学ばれたキャリアの方です。

大河原さんのデザインはパッと見でキャラの性格が理解できて、機能美を感じるものですが、モダニズムのデザイン的な美学を感じさせるのはデザインに対する基礎的な教養をお持ちなのかと思います。





脇のデッキから、横浜の港の夕景をバックに。
トリコロールカラーの直線的なエッジの効いたデザイン、というのはモダニズム・デザインの王道を行っている気がします。
そして近くで見ると、あたかも本当に動く機体が整備場に収納されているかのようで、テンションがあがります。






そして、ガンダムの脇で、はしゃぐオジサン(笑。






思えば、ガンダムのプラモデルを子供の頃に一生懸命につくったことが、今の職業にも繋がっています。


その当時は、40年後にもこのような形で、実体化したガンダムを楽しめる日が来るとは夢にも思っていませんでしたが、この40年で色々な世代の人に色々な方法で楽しめる、持続的なコンテンツに成長したのだと思います。



そして、自分自身もガンダムにも負けないような、シンプルなロングライフ・デザインで使い手から愛されるようなケンチクづくりをこれからも継続してゆければ、、、と思いを新たにした次第です。




最後に、今年も大変な日々でしたが、皆さまも良いお年を、お過ごしください。



2021/12/25

府中:断熱工事1

工事進行中の府中の二世帯住宅は、高気密・高断熱仕様としていますが、今回はその断熱工事の様子をご紹介。


この住宅は民間規格「HEAT20G2グレード」の断熱仕様としています。

これは、室内がおおむね13℃を下回らない程度の断熱グレードとされていて、現在の省エネ等級の最上級「等級4」で求められている外皮平均熱貫流率UA値0.87に対し、UA値0.46(温暖地域の場合)が求められます。

UA値はその数値が小さいほど性能が良いので、いわば「等級4」の倍の性能を持つのが「HEAT20G2グレード」になります。

とはいえ、そもそも日本の断熱基準は低く設定されていると言われており、「HEAT20G2グレード」でも高気密・高断熱仕様としてはミドルクラスの性能といえます。

個人的には東京のような温暖地域では費用対効果を考慮するとG2グレードくらいがバランスが良いのではないかと考えていますが、この府中の住宅もそうした考えのもとに断熱仕様が設定されています。




断熱材施工中の外壁側の様子。窓枠部分に木枠がついていて、その外側の外壁全般に張られているのが25ミリの断熱ボード。これは一般的に「付加断熱」といって、柱や梁といった構造部分から熱が伝わるのを防ぐために外壁側にまんべんなく張り巡らします。




外壁面をもう少し拡大してみた写真。外壁一面に張られているのが断熱ボードで、製品としては「フェノバボード」を使用しています。ざっくり言うと、密度の高い発泡スチロールを壁一面に張っているような感じです。このような処置をすることで外気の冷気・暖気が室内側に侵入するのを防ぎます。





一方、室内側はグラスウールを入れています。グラスウールはガラス繊維の断熱材で、木造ではよく使われています。

今回使用した製品は木造の規格に合わせて使いやすいように袋入りにされた製品「アクリネクスト」を使用しています。

隙間が出来ないようにまんべんなくグラスウールを充填することが施工上大事なポイントになります。




断熱工事は高気密・高断熱仕様のキモなので、また別の記事で改めてレビューしたいと思います。






2021/12/18

白井晟一展

 先日、渋谷の松濤美術館に「白井晟一展」を見に行きました。


白井晟一は戦後から80年代初期にかけて活躍した建築家で、寡作でありながら密度の濃い建築作品を創った建築家です。

白井は京都で生まれ育ち、戦前にドイツ留学して哲学を学んでおり、西欧建築に対する深い理解と教養を身に着けた一方で、伝統的な日本建築にも造詣の深いという、ちょっと異色の建築家です。


松濤美術館は白井の晩年の代表作で、松濤美術館の創立40周年を記念した回顧展として白井展が開催されました。




松濤美術館は外観からして要塞のようで明らかに普通でない(笑、、、ですが、ちょっと中を覗いてみたいなるようなデザインです。




中に入ると楕円形の吹抜けがあります。

地下2階から2階まで、4層の吹抜けになっていて、地下には噴水。

少しバブルな香りもしますが、、、最近の公共建築には見られない、大胆な構成になっています。





階段室も有機的な曲線と暗めの照明が洞窟の中に居るような感じで、心地よい空間になっています。





こちらの模型は六本木に近い、飯倉交差点に建っているノアビル。

六本木のランドマークのひとつとして認知されている、有名な建物ですが、こちらも楕円の黒い墓標のようで、異彩を放っています。




白井の建築は、大きな建築はほとんど無いものの、それぞれの建築が密度が濃くて圧倒される気持ちになります。


松濤美術館も建築としてのインパクトは大きいですが、美術の展示空間としては使いにくいだろう、、、という気がします。


とはいえ、元々はサロンの用途になっていたところを展示スペースにしたりしているので、当初の使い方の想定と現在の使われ方にギャップがあるようです。


今回の展示は2部構成になっていて、先日までの第一部は図面や模型を中心に白井の業績を回顧するものでしたが、第2部は建築そのものを竣工当時の状態に出来るだけ戻して、白井が意図した建築空間そのものを展示する、という試みがなされるようです。


建築が時代と共に使われ方が変化してゆくのは必然といえますが、40年の歳月を経て当時の状態への復元が試みられるというのは、建築に根源的、本質的な魅力が備わっているからなのだろうと思います。


決して使いやすくもなく、大きくもない建築ですが、デザインもサステナビリティ=持続可能性の重要な要素のひとつであることを教えてくれる、チャーミングな建築だなと思います。



1月からの第2部の展示を楽しみにしたいと思います。




2021/12/11

府中:構造検査

 少し前になりますが、府中の住宅の現場では金物検査を実施しました。


2階建ての木造住宅の場合、構造検査は法規上実施の義務はありませんが、安心・安全を確認するために、木の構造体が完了した時点で設計者が自主的に行う検査として実施しています。(地方自治体によっては義務化している地域もあります。)



今回、構造設計のエンジニアと協働しているので、エンジニアと一緒に検査を行いました。




屋根、壁の構造体があらわしになった2階のリビング。窓の開口も開いているので、だいぶ完成時の感じがわかります。




同じく2階のリビングの南側の窓を見たところ。

2階リビングは大きな窓を取ったので、かなり日当たりの良い空間になりそう。

中庭に面した窓なので、プライバシーも気にならないかと思います。




寝室、廊下側の眺め。

まだ間仕切りが入っていないのでヌケ感のある、広々とした空間になっています。

画面左側が寝室になりますが、中庭からの光が入る、穏やかな寝室になりそうです。




1階もほぼ完了しています。写真の左側は中庭に面した大きな窓の開口。



肝心の検査の様子を撮り忘れた、、、のですが、全体的に整然と出来ていて指摘事項の無い良好な結果でした。


構造体がそのまま見えているのをスケルトンといいますが、非常にワイルドでカッコ良いのですが、断熱性や耐火性に問題があるので都市部で実現するには難しい面もあります。



とはいえ、こうした構造体を部分的に見せることで空間に力強さや木の素朴な質感を演出することが出来るので、色々工夫しながら梁や柱を見せることはよくやっています。




構造は安心・安全のみならず、デザインの要にもあるので、細心の注意を払って常に設計していますが、その結果をこうしてエンジニアリング、デザインの面から確認するのが構造検査の主旨になるのかと思います。



そしてここから、工事は断熱工事へと入ってゆき、どんどんと進んでゆきます。








2021/12/05

ご当地ビール

 緊急事態宣言の解除もあって徐々にコロナ前の平常に戻りつつある感じですが、先日、久々に友人と事務所飲みをしました。


事務所飲みといっても、スーパーで買ってきたお惣菜とお酒を飲む、ごくごくシンプルなものでしたが、周りの人達や時間を気にすることなくゆったり飲食できるのが事務所飲みの良いトコロです。









写真は友人が持ってきてくれた、UK製の「ロンドン・プライド」とイタリア製のご当地ビール。


いずれもご当地で味わったビールを日本のお店で見つけて買ってきてくれたそうです。


最近は、海外の食品も探せば日本で手に入るようになりましたが、ご当地で堪能した「あの味」が気軽に楽しめるというのは、海外渡航が未だに難しい昨今ではより有り難いものです。



とはいえ、同じ食品でも何故か現地で食した味が日本では再現できない、、、気がするのは不思議なものです。




まだまだ、大人数で会食したり旅行がしにくい世の中ですが、良い加減に元に戻ってほしい、、、とご当地ビールを飲みながら切に願った次第です。