不定期にアップしているイタリア視察、ヴェネツィアの2回目です。
サンマルコ広場に面していて、ケンチク好きなら誰もが立ち寄りたい場所として「オリベッティ・ショールーム」があります。
イタリアの近代建築の巨匠の一人、カルロ・スカルパの設計によるショールームです。
元々はイタリアの家電メーカーのショールームですが、その後お土産屋さんに改造されたりして往時の面影が無くなっていたところ、近年になって修復されて新たにスカルパの文化遺産を展示するギャラリーとして復活していました。
自分にとっては20年以上前の1998年夏に訪れたことがあったのですが、今回再訪がかないました。
外観はこんな感じで、地味な印象です。
でもよくよく見ると、入口廻りの造作とかが凝っていることに気づきます。
レールで吊られた鉄の格子戸。
木の天井と鉄や真ちゅうの錆びた質感がマッチしています。
大理石と真ちゅうを組み合わせた照明。
50年以上前の作品ですが、古さと新しさが同居したデザインです。
このショールームで最も有名な大理石の階段。
緩やかな勾配と対称形を崩しながらリズムをつくりつつ、端正なたたずまいも感じさせる、近代建築を代表する名作階段のひとつです。
2階も天井の低いギャラリーになっていました。
20年前、お土産屋だった時に訪ねた時は2階に上がることが出来なかったので、ちょっと感激でした。
木と大理石、しっくいの質感、穏やかな光がなんとも良い雰囲気です。
中央の丸い部分は噴水と水盤で、床のタイルはベネチアン・モザイクタイル。
素材の使い方の細やかさとデザインの緻密さやはり工芸品といった方が良いような趣きがあります。
カルロ・スカルパは、一般的なイメージの白いガラスの近代建築というよりは、イタリアの伝統的な素材や技術をモダン・デザインに取り込んだ近代建築を創り出したところに大きな功績があるといえそうですが、年月を経ても輝きを失わずにむしろ風合いを増すようなデザインや素材の使い方は大いに見習うべき点があるように思います。
言葉や数値で表現しにくいものですが、こういうロングライフなデザインこそがサスティナブルだなあと写真を見返しつつ、しみじみ思います。