今週の火曜日に慶応大学であった建築家・谷口吉生さんの特別講義というのに、慶応で先生をされている小林さんから案内をいただいたので行ってきました。
谷口さんはいわずとしれた世界的建築家の一人で、滅多にやらない講演会は常に立ち見の大盛況な訳ですが、火曜の午前9時開始、という講義のコマでやっていたせいか、ヒトが少なくてちょっとビックリでした。
なんか若い学生さんで熱気あふれかえる教室におっさんが紛れ込むのも浮いちゃうかなあ、とか心配していたのですが、杞憂でした。。。
かなりもったいない話ですが、美学の講義の一環らしく、人文系の授業というせいもあったかもしれません。
ただ、その講義というのはその昔、谷口さんの父上の建築家で東工大教授だった、谷口吉郎さんが担当されていたそうで、その縁もあって講義を引き受けられたらしいです。
講義でも話していましたが、現在の慶応の学長・清家篤さんの父上の清家清さんというのは谷口吉郎さんの東工大教授時代の助教を務めていたらしく、旧知の仲らしい。谷口さんというのは清家清さんに強く薦められて建築家になったのだとか。
慶応での講義ということで、たぶん普段あまり語ることはないであろう、そういった慶応との縁とか生い立ちについての話を色々されてました。
いわばアカデミーの超エリート、といいますか、普通の人とは出自が相当異なるなあ、という印象を少なからず抱いてしまう訳ですが、芸能界において2世の活躍がなかなか難しいように、建築家も基本的に一代限りの職業という傾向が強いので、世界的に評価される建築家になりえた、というのはひとえに御本人の精進の賜物、というのもまた厳然たる事実かと思います。
講義では、
「建築は本質的に器である」、「機能的かつ安全性を満たして最小限の要素でつくる」、「映画をつくるようにシーンをつなぎ合わせてつくる」、
といった珠玉のキーワードをMOMAや葛西臨海水族園を事例にしてすごくわかりやすく説明していました。
建築家というのは難しいことを難しい言葉で語るヒトが多い訳ですが、コトバも建築も簡潔にする、ということは大事なことだなあ、と改めて思いました。
谷口さんの建築の中にいると、キレイに掃き清められた社寺の境内の中に佇んでいるような感覚にとらわれることがあります。そういう空間の質というのは、ご本人のそうした簡潔さに対する志向が反映されているのかもしれませんが、やっぱり自分も間接的に影響を受けている部分があるなあ、というのと、もっと自分も精進せんといかんなあ、、、と思った次第です。