先日、渋谷の松濤美術館に「白井晟一展」を見に行きました。
白井晟一は戦後から80年代初期にかけて活躍した建築家で、寡作でありながら密度の濃い建築作品を創った建築家です。
白井は京都で生まれ育ち、戦前にドイツ留学して哲学を学んでおり、西欧建築に対する深い理解と教養を身に着けた一方で、伝統的な日本建築にも造詣の深いという、ちょっと異色の建築家です。
松濤美術館は白井の晩年の代表作で、松濤美術館の創立40周年を記念した回顧展として白井展が開催されました。
松濤美術館は外観からして要塞のようで明らかに普通でない(笑、、、ですが、ちょっと中を覗いてみたいなるようなデザインです。
中に入ると楕円形の吹抜けがあります。
地下2階から2階まで、4層の吹抜けになっていて、地下には噴水。
少しバブルな香りもしますが、、、最近の公共建築には見られない、大胆な構成になっています。
階段室も有機的な曲線と暗めの照明が洞窟の中に居るような感じで、心地よい空間になっています。
こちらの模型は六本木に近い、飯倉交差点に建っているノアビル。
六本木のランドマークのひとつとして認知されている、有名な建物ですが、こちらも楕円の黒い墓標のようで、異彩を放っています。
白井の建築は、大きな建築はほとんど無いものの、それぞれの建築が密度が濃くて圧倒される気持ちになります。
松濤美術館も建築としてのインパクトは大きいですが、美術の展示空間としては使いにくいだろう、、、という気がします。
とはいえ、元々はサロンの用途になっていたところを展示スペースにしたりしているので、当初の使い方の想定と現在の使われ方にギャップがあるようです。
今回の展示は2部構成になっていて、先日までの第一部は図面や模型を中心に白井の業績を回顧するものでしたが、第2部は建築そのものを竣工当時の状態に出来るだけ戻して、白井が意図した建築空間そのものを展示する、という試みがなされるようです。
建築が時代と共に使われ方が変化してゆくのは必然といえますが、40年の歳月を経て当時の状態への復元が試みられるというのは、建築に根源的、本質的な魅力が備わっているからなのだろうと思います。
決して使いやすくもなく、大きくもない建築ですが、デザインもサステナビリティ=持続可能性の重要な要素のひとつであることを教えてくれる、チャーミングな建築だなと思います。
1月からの第2部の展示を楽しみにしたいと思います。