2010/02/01

沼津&御殿場

先日、日帰りで伊豆方面にミニ建築ツアーに行ってきました。

まずは沼津にある杉本博司設計の美術館


小さい美術館が集合したエリアの一角にあるのですが、もともと別の美術館だったのを最近リノベーションしてつくったらしいです。


エントランス廻りの眺めです。奥に中庭が見えてます。



傍らには大きな石組がつくられています。



館内にある別の中庭にはこれまた古墳に似た石組が。

インテリアは至ってミニマムな表現のホワイトキューブでしたが、やはり元の建物自体が必ずしも良い建築ではない感じだったので、その建物の枠組みを劇的に変化させるには至っていない感じでした。
なので、杉本博司の手の痕跡を多く感じられるのは庭や石組だったのですが、ガラス窓を通してしか見ることが出来ない空間になってしまっているので、やや消化不良の感じは否めませんでした。

とはいえ、杉本ファンにとっては一見の価値アリ、かと思います。
かくいう自分も90年代からの杉本ファンなので、見れて非常によかった訳ですが。


で、お次に御殿場にある、建築界の重鎮、故吉田五十八の設計した旧岸信介邸と隣接した敷地にある、内藤廣設計のとらや工房に行ってきました。



道路側の入口です。この門の奥に旧岸邸ととらや工房があります。
駐車場の看板が無かったら見過ごしてしまうような、さり気ない佇まいなのですが、あえてこういうひっそり感を演出しているみたいです。


旧岸邸の全景です。大政治家の邸宅らしく、敷地がとにかく広い。
同時に豪勢に見せるというよりかは、渋い色の勾配屋根にして周辺環境になじむように配慮していることがうかがえます。


中は基本的にモダンリビングといいますか、純和風というより近代建築を和風に仕立てたという趣きが強い感じです。床の間に見立ててあるアルコーブとかがちょっといい感じです。

規模は違うにせよ、昔の祖母の家に近いような、なんだか懐かしい雰囲気というのがあります。

             

書斎です。岸元首相の写真が飾ってあります。こういう木と障子のインテリアというのも懐かしい感じがします。


数寄屋和風の名手だった吉田五十八らしく、ディテールもちょっと凝ってます。
左は引戸の取手ですが、扉に貼られた和紙と一体になって、存在感をなくすようにしてます。
右は窓の枠ですが、斜めに面取りされていて細く繊細に見えるように工夫されています。

建築家というのはこういう細部に至るまで気を使って設計している訳ですが、建物を見に行くと設計者は、こういう詳細を見つけては「萌え」ている、、、といえます。。。



で、最後に同じ敷地のとらや工房でお茶をしました。


              

内藤さんらしい、ごくシンプルでてらいの無い建築です。


              

とらやの工場と休憩スペースが隣接しているのですが、休憩スペースは半屋外になっていて木をふんだんに使った、心地良いスペースです。外にはお庭と池があるのですが、林の中に囲まれていて池の小滝の音だけがチョロチョロと聞こえてきます。たぶん、庭の風景や音も含めて一体的に空間をつくっているのでしょうが、建物だけでなく廻りの環境も含めた全体として建築を考えるというのは大事だなあ、と思います。

旧岸邸は、基本的にコンクリートの建物に和風の意匠を徹底的に施した形式になっているので、どことなく構造と意匠のギャップがどうしても感じられて実はあんまり好みでは無かったのですが、吉田五十八の木造をむしろ見たいなあ、と思いました。
今回見た中では内藤さんの建物が個人的に一番良かったのですが、あまり気負いすぎず、凝りすぎずにデザインしている、その抜け感がいいのかもしれません。良く見るとすごく凝っているのですが、傍目にはそう気づかないような、建築を主役としていない造り方は学ぶべきものがあるなあ、と思いました。

ちなみに今回は「所長特権」で平日に休んで行ったのですが、建築をじっくり観ようという時は結構いいかもしれません。人がいなくて寂しい感もありますが、その分落ち着けるというのは確かです。
まあ、平日に休むというのはなかなか難しいのですが。。。