2021/01/28

松濤美術館

 先週末は渋谷の松濤美術館へ久々に行きました。


1/31まで開催されている「船越桂展」を観に行ったのですが、感染対策ということで連絡先の登録や人数制限をやったりして、三密にならない環境でかえって快適に鑑賞できました。



松濤美術館は昭和の伝説的な建築家、白井晟一の晩年の代表作です。



外装は曲面の石貼りで、美術館らしからぬ重厚で異彩を放つデザインです。





中に入るとブリッジのかかった楕円形の4層吹抜けが目を惹きます。

地下2階部分にあたる吹抜けの底面には噴水が出ており、叙情性を高めます。渋谷の住宅街にいながら、ちょっと異国に来た気分を味わえます。





階段室も暗めの室内に照明が劇的な影をつくっていて、神秘的な雰囲気を漂わせています。中世のヨーロッパの建築の中にいるような気分を味わえます。




かように、松濤美術館は楕円形や噴水吹抜け、石貼りなどの建築のデザイン的な主張が非常に強く、正直美術館としては使いにくそうな感じもする、、、異色の美術館です。

とはいえ、こうした西洋の古典建築にも通じるデザインは展示されるコンテンツによってはその空間と展示品が共鳴して、不思議な調和を生み出すこともあります。


今回の船越桂展はまさにそうした感じの展覧会で、船越さんの有名なクスノキによる木彫の人物像が白井晟一の濃厚な古典主義的な空間の中にただずむ姿はなんともいえない、懐かしさの中に古典の凄みを感じさせるような、昭和レトロの良質な部分が結晶したような魅力的な展示空間が出来上がっていました。



それにしても、公立でよくこうした個性的な美術館を建てたものだなあと訪れる度に感嘆してしまいますが、竣工は1981年だそうで、今年でちょうど創立40周年です。


昨今、この時代の建物は老朽化を理由に解体新築される傾向が強いものですが、松濤美術館のように建築家が全身全霊をかけて打ち込んだ建築は、未だにその魅力を失っておらず、年を経るごとにその魅力や価値が増してゆくようにも感じられ、その価値に気づいた人々によって大切に使われてゆくのだろうなと思います。





行く度に新しい発見のある松濤美術館ですが、やはり意匠的にも耐久性の上でも質の高い建築をつくることがサステナビリティーに直結すると強く感じました。