2024/09/10

夏祭り

 まだまだ暑い日が続いてますが、8月下旬に六本木・麻布十番の夏祭りに行ってきました。


麻布十番の夏祭りは商店街に屋台がズラリと並ぶことで有名な祭りですが、コロナでしばらく行けておらず、5年ぶりくらいの訪問。




多くの人で賑わう商店街。

人の顔が写り込まないように上振れ気味に撮っているので、ちょっとわかりにくいのですが、屋台と人で埋め尽くされています。






こちらは六本木ヒルズの盆踊り会場。


先端的なデザインのアリーナ広場に、昔ながらのやぐらと提灯というコントラストがなかなか良いです。


こちらも人でいっぱい。

場所柄、外国の方も多く、老若男女へだてなく来場しているのが印象的。



麻布十番の祭りと六本木ヒルズの盆踊りは、それぞれ主催が異なるのですが、随所に設けられた屋台やイベント会場を通してそれぞれのエリアが緩やかにつながっている感じです。



都心のオシャレなエリアのお祭りながら、地域性や古くからの伝統も感じられるところが面白い祭りです。



大規模再開発の施設は、鳴り物入りでオープンしても持続的に集客するのが難しいケースが多いように思われますが、六本木ヒルズはオープンから20年を経過してもなお集客力が衰えていないようです。

これも、周辺地域の住民を含めた連携による街づくりが上手くいっているからかと思いますが、こういうお祭りが毎年盛り上がっているのも、街づくりの成果のひとつなのかもしれません。



やはり、街づくりはハードとソフトの両方が機能してはじめて上手くいくものだと思いますが、古いけど新しい、そんな新旧が融合した街づくりが大規模な再開発による街づくりのひとつの指標になるのかなと思います。



まあ、こちらは屋台飯を食しながらビールで乾杯、、、な夏の夜を満喫しにいっただけですが、、、多くの人で賑わう街を散策しつつ、そんなことを思いました。








2024/08/29

葛西のアートイベント

 お盆期間中に、葛西臨海公園の中でアートを展示するイベントというのがあったので行ってきました。



谷口吉生設計の展望施設に、蜷川実花の花の作品。

植栽のヒマワリとマッチしてます。




展望室の中にはこれも作品の一部である、クリスタルの吊物。

展望施設の愛称は「クリスタルビュー」なのですが、それに掛けているのかと。


ちなみに、このインスタレーションの廻りには人だかりができていたので、上ブレ気味のカットです。






そして、目玉は葛西臨海水族園の夜間展示。

館内の照明をできるだけ落として、夜の状態で水槽を展示する試み。


写真は有名な回遊型水槽で、シュモクザメとかが展示されています。



夏の夜にムーディーな雰囲気、、、かと思いきや、写真をご覧いただくとわかるように、水槽前には黒山の人だかり、が出来ていました。。。



さすがに夏休み真っ只中であっただけに、ちびっ子連れのファミリーの方々が大勢いらっしゃるイベントになっていたのでした。






とはいえ、夜の水槽もまた興味深いものでした。

ほとんどの水槽は人だかりが出来ていてゆっくり見られる感じでもなかったので、早々に退散しましたが・・・。





一方、外部ではガラスドームのライトアップと霧の演出を催しており、建築/アート好きとしては、大きな見どころのひとつでした。





有名な、葛西臨海水族園のガラスドーム。谷口吉生の設計で、葛西のランドマークです。

ゆらぎのある青いLEDで照らされていて、なかなか幻想的な光景でした。






残念ながら、葛西臨海水族園は再開発が決定されており、現在の水族館本体の脇の敷地により大規模な新館の建設が決定されています。


そのため、現在の水族館は解体こそ免れたものの、水族館としての役割は終えるそうです。


おそらく、建物の魅力を残すような用途へと改修されるのではないかと思いますが、展望台と共に谷口吉生の傑作、ひいては将来の世界遺産候補、と言っても過言ではない建築をきっちりと活用してほしいなと思います。




今回のアートイベントはそうした活用の方法を模索するものでもあったのかと思いますが、真夏の夜の夢、のような、良きイベントでした。









2024/08/17

阿佐ヶ谷のメンテナンス

 先日、「阿佐ヶ谷ライト・エコハウス」の定期メンテナンス・チェックに行ってきました。




外観は大きな汚れやヘタリも無く、竣工時からあまり変わっていない様子。



むしろ驚いたのは、道路向かいの隣地民家が取り壊されて更地になっていたこと。

オレンジ色の養生ネットフェンスが張られていますが、更地になるとけっこう広い敷地だったのでちょっとびっくり、、、という感じです。



街並みがドンドン変わってゆくのは東京でよくあることではありますが、見慣れた場所が変わるのを目の当たりにすると一層のオドロキがあります。



当該の更地は面積が広いので、普通に考えるとHMやデベロッパーの手に渡り、4軒くらいの分譲住宅としてミニ開発されるか、アパートorマンションが建つか、、、といった感じになりそうですが、いずれにしても豊かな街の風景に資するような建物が建ってほしいものです。




そして、インテリアや光庭側も大きな劣化は無く、全体的に建物に大きな問題は無さそうでした。


写真に見られるアオダモの木はもともと2階くらいまでの高さでしたが、だいぶ成長しました。



残念ながらブログに載せられるようなインテリアの写真は撮らなかったのですが、インテリアもお施主様の几帳面な性格を反映して、全体的にキレイな状態でした。

そして猛暑日の最中に訪問したのですが、エアコンは控えめ運転で高断熱の効果も実感。




この住宅は満6年になりましたが、外部の木材の経年変化以外は大きな問題は無く、ちょっと安心。




住宅は竣工したときから、住み手の生活に合わせてだんだんと成長してゆくものですが、定期的に伺うことでその変化を実感できるのは、設計者にとっても非常にありがたい貴重な機会、というものです。





メンテナンスも大事な業務のひとつですが、設計したいずれの住宅・建物においても、末長く見守り続けてゆければ、、、と思います。







2024/08/08

 先日、横浜のみなとみらいエリアを歩いていたら、ちょうど虹がかかってました。






夕暮れ時のわずかな時間でしたが、個人的に久々に見た虹でした。




写真をながめてみると、現地ではもっと鮮やかに見えた気がしますが、肉眼とカメラでは印象のギャップがあるなあと、改めて思います。


スマホのカメラでは様々な補正ができて、現実よりもキレイに仕上がるケースもかなりありますが、月や星の光り、海や川の流れといった微妙に揺らぐ自然現象の撮影というのはまだまだ苦手なのかな、という気もします。



まあ、カメラマンが下手なだけ、、、という話しもありますが、スマホのカメラの性能も日進月歩で進んでいますので、数年後にはもっと鮮やかに撮れるのだろうなと思います。



そして、虹のような極めて稀な自然現象を久々に見るとなんだか良いことが起こりそうな気がする、、、と思った、とある夏の日の出来事でした。





2024/07/13

旧山邑邸

フランク・ロイド・ライトが設計した旧山邑邸に約30年ぶり(!)に訪問しました。

兵庫県芦屋市の丘の上に建つ住宅で、竣工は1924年。
今年でちょうど100年になりますが、コンクリート造の住宅として始めて重要文化財に指定されている住宅です。

旧山邑邸は、ライトが帝国ホテルの設計をしている時期に依頼された住宅ですが、ライトは基本設計のみを担当し、実施設計・現場監理は日本人スタッフの遠藤新らが担当しています。

重要文化財に指定されたのは1974年だそうで、竣工から40年と、文化財としてはかなり早い時期に指定されていますが、実際に見てみると旧帝国ホテルにも通ずる凝った意匠の工芸品のような住宅で、とても見応えのある住宅です。

今回、個人的に3回目の訪問だったのですが、冒頭に書いたように約30年ぶり、、、というだいぶブランクを置いての訪問になりました。




駅の方から歩いていくと、丘の緑の中に山邑邸が見えてきます。
緑の中に見えるベージュカラーの建物が山邑邸です。
30年前はもう少し木立ちが低くて、より目立っていたような気がします。



公道の坂道を折り返すように登ってゆくアプローチ部分。アプローチを登った先にある

玄関。



玄関廻りから建物を見たところ。大谷石の彫刻的な文様が帝国ホテルと似た意匠になっています。丘の上の勾配に合わせてひな壇状になだらかに積層しているのがわかります。




玄関ポーチから玄関を見たところ。一見するとどこが玄関かわかりませんが、、、左側の暗いくぼみ部分に扉があります。
ライトの建築では動線上に極端に小さな空間やニッチな部分があり、玄関が驚くくらい小さいこともよくある気がします。
これは、小さな空間と大きな空間を対比させて、大きな空間の開放感をより強調する、といいう手法によるようです。
扉を入った先にある玄関も小さな空間で、割と素っ気ない部屋です。そこからすぐに階段があり、階段を登った先の2階に応接室があります。



応接室。部屋の奥の窓から、芦屋市街が一望できます。狭くて小さな玄関、階段からの開放的な空間と眺望が堪能できるようになっています。
天井は折上げ天井になっていて、折上げ部分の小窓から光が効果的に入ってきます。
ソファや本棚が造り付けになっていて、天井の低いニッチ部分が心地よく感じられます。



        

部屋の反対側から見たところ。中央の大谷石の部分が暖炉になっています。
ライトの建築では家の中心に暖炉があることが多いのですが、暖房機器らしい設備が無かったので、実用上の暖房として想定されていたのかと思います。
そして、暖炉を中心にした対象形のデザインになっていますが、長方形で対象形の空間は、船舶のインテリアを思わせる造りになっています。




3階の和室。3部屋がつながっています。この部分は実施設計段階で和室になったそうですが、やはり1920年代当時の人の感覚からすると、和室のほうが落ち着いたのかもしれません。和洋折衷の意匠が面白いですが、他の部分とも違和感なくまとめられています。





床の間を見たところ。
欄間の銅板の飾り板や長押上の小窓、飾り棚の窓、等々が空間の抜けをつくっていて、採光通風に配慮されていて軽さのある空間をつくっています。





和室を出たところの廊下。縦長窓が並んでいて、リズミカルな明るい空間になっています。
左側が和室ですが、段差があちこちにあるのもこの住宅の特徴です。
ライトは高低差を上手く利用してなだらかに全体がつながる空間をつくるのが得意ですが、この住宅でもその特徴がよく現れているかと思います。




縦長窓のアップ。おそらくこの当時は大きな一枚ガラスをつくるのが難しかったため、組子状に窓を組み合わせて、かつ銅板の飾り板を入れて複雑で繊細な明かりをつくっています。
加えて、網戸も組み込まれていて、かなり凝った設えの窓になっています。
小窓を含めて窓が多くあるのは、当時は冷房が無かったので、夏を旨とすべし、の精神でつくったためかと思います。




こちらは家族部屋ゾーンの中にある、和室の寝室。こちらの和室も狭くて天井の低い、こじんまりとした空間ですが、とてもコージーで居心地の良い空間になっています。やはり、大きく作れば良い、というものではないということを教えられる気がします。




4階の食堂。
こちらは天井の高い、開放的な空間になっています。センターに暖炉もあって、少しフォーマルな雰囲気のある意匠になっています。

そして、こちらの食堂の前にはテラスがあって、外に出られるようになっています。






テラスに出て食堂側を見たところ。
大谷石のオーナメントと水平ラインを強調した庇が、とてもライトらしい意匠だなあと思います。




そして、食堂を出てテラス越しの眺め。芦屋市街、大阪湾を一望できるドラマチックな景色が堪能できます。

このテラスは開放感があって本当に気持ちよく、この住宅のクライマックスといえる場所になっています。




以上、旧山邑邸のレビューでした。

やはり、小さな玄関から2階の応接室、3階の和室、4階の食堂へと至る空間のドラマチックな展開のプランニングはさすがといえますし、窓や家具等の造作は現代ではなかなか再現できない、工芸品のような珠玉の住宅といえます。


ついついレビューに力が入ってしまいましたが、久々におとずれてみるとこんな空間あっただろうか?、、、、という部分がかなりあって、自分の記憶力の無さというか、、30年のブランクを感じてしまった訪問ではありました。




とはいえ、日本の近代建築が到達した最高峰の住宅のひとつであることには間違いなく、その点を再認識できた訪問になりました。






兵庫方面に行かれる機会がありましたら、訪問されることをオススメします。