2020/06/20

イタリア視察:フィレンツェ2

フィレンツェの2回目はサン・ロレンツォ聖堂のミケランジェロの作品について。



サン・ロレンツォ聖堂はルネサンスの興隆を担ったメディチ家の加護のもとにルネサンス時代に大きく発展した教会です。



教会の正面(ファサード)。ご覧の通り、粗い石組みのままで未完の状態です。
ミケランジェロのデザインによるファサードのデザイン案が残されていますが、資金や
政治的な事情で実現しなかったようです。未完のまま500年近く残っているのもすごい話ですが、、、やはり石造建築の耐久性とメンテナンスに対する不断の努力の結果かもしれません。



この聖堂は様々な用途の複合体になっていますが、その中からミケランジェロに関する部分をご紹介します。




まずはメディチ家礼拝堂にある、新聖具室。









彫像を含めてミケランジェロの作品です。
訪問時は部分的に修復用の足場がかかっていて見づらい箇所もありましたが、素材を限定しつつ建築の厳格なプロポーションと彫像の肉体的な量感が対比的で緊張感のある空間を創り出しています。
この部屋はメディチ家の墓所にあたる訳ですが、墓所にふさわしい静謐な空間を創り上げているなと思います。




そして、サン・ロレンツォ聖堂のもうひとつのミケランジェロ作品、ラウレンツィアーナ図書館。





この図書館で有名なのは閲覧室よりもむしろ前室にある大階段かもしれません。
天井の高い、縦長の空間にオブジェ的でマッシブかつ流麗な階段が鎮座しています。


この階段は建築史の教科書に必ず出てくるような階段ですが、おそらく階段単体をデザインの対象としてきっちりと設計した最初期の代表例なのかもしれません。
実際に見てみると、彫刻的でとても迫力のある階段です。





閲覧室の中もミケランジェロのデザインです。
閲覧台と窓割・列柱が厳格でリズミカルな空間をつくりだしています。


この閲覧室の奥が展示室になっていて、サン・ロレンツォ聖堂の宝物が展示してありました。


現存するミケランジェロの建築作品は数少ないのですが、そのうちの2つを見ることが出来るサン・ロレンツォ聖堂は建築好きにとっては欠かすことの出来ない聖地、とも言えます。


いずれも重要な文化遺産として大切に保存されていますが、保存と利用を上手く両立させながら活かされているように思いました。


日本においても文化遺産の保存と利用はずっと課題になっていますが、建築の場合は立入禁止で外から眺めるしかないような例が多く、残念に思うケースがよくあります。



そういう意味ではイタリアでは保存と利用を両立させながら上手く観光資源として活用している例が多くみられました。
日本でもこうした利用可能な文化遺産がより増えてゆくといいなと思います。