2013/09/17

ディテール:みどりの1

今回は現場のレビューで紹介しきれなかった部分のディテールについてちょっと書いてみたいと思います。



今回は「みどりの」の住宅の窓につけたプリーツスクリーンについてです。

プリーツスクリーンは和紙っぽいテクスチャーの繊維を折り畳んだ素材によるスクリーンで、いくつかのメーカーさんが様々な製品を出しています。

なんとなく柔らかい光がつくられて、どことなく和っぽいテイストもあり、シンプルでもあるのでLHAでは良く使っています。










光が透けるとテクスチャーもうっすらと浮かびあがってなかなかキレイです。


「みどりの」は素地の木が多くシンプルな空間で、障子も何箇所かに使っているので、障子と同じように柔らかにコントロールされた光になるプリーツスクリーンを取り入れることで全体の光の質感を調整することを意図しました。結果としては上手くいったかなと思います。


プリーツスクリーンは基本的にカーテンの代わりに直射日光や視線をさえぎる訳ですが、最近は同じようなスクリーンで断面に空気層をつくって断熱性能を持たせたスクリーンもあったりします。



こうしたカーテンやスクリーンといった製品は建築のディテールではありませんが、インテリアの雰囲気に大きな影響があるディテールの要素なので、インテリアと合わせてセレクトすることが多いです。



プロダクトものは日々進化しているので、こちらも情報が遅れないように勉強しつつ、、、建築やインテリアの雰囲気に合わせて取り入れているところです。




2013/09/07

The Wind Rises

建築の話ではありませんが、宮崎駿監督が引退を表明されました。
ちょうど先日、「風立ちぬ」を観たので、その感想も含めてちょっと。


宮崎作品は「風の谷のナウシカ」をコドモの頃にリアルタイムで観て以来、自分の思春期に少なからぬ影響を受けてきましたが、近年はどちらかというともっとお子様世代に向けた娯楽作品を創り続けているようで、ちょっと世代的にギャップが生じたなあ、、、という感じを受けていました。
特に21世紀になってからの作品はあまり観ていません。。。

「風立ちぬ」はそうした中で「お子様対象」 としてのアニメの枠を敢えて外した作品として創られた、ということが語られたり、「最後の作品」(実際にそうなりそうですが)として宣伝されたりといった感じで、久々に興味を惹きました。

そんな訳で、宮崎作品を四半世紀ぶり(!)に劇場に足を運んで観に行ったのですが、自分の少ない映画経験の中では最高傑作といえる、、、ものだったと思います。


映画芸術というのは時間、場所、現実と夢、といった制約を飛び越えてシーンをつくりながら物語りが進められる点にひとつの面白さがある訳ですが、そうした特性をアニメならではの虚構を表現する手段を使って上手く組み立てている点は集大成に相応しい、といえます。

個人的にはフェリーニの「8 1/2」と似た印象がして、その飛躍の仕方が心地よい感じでした。

そして、おそらく主人公を通して自伝的につくった部分が多分にあるのかもしれませんが、「ものづくり」に身命を賭す生きざまというのは「ものづくり」の端くれとしてココロに響くものがありました。


「創造的人生の持ち時間は10年だ、その時間を存分に生き給え」といった感じのセリフが出てきますがちょっとドキリとしますね。。。


だいたいのクリエーターは爆発的なエネルギーで自分のスタイルを確立する時期というのがあって、その時期に成し得たことを展開しながら成熟を迎える、、、というパターンが多いと思っていますが、創造的人生の持ち時間とはそういう時期のことかなと思います。

こう考えるとはたして自分の持ち時間はどの辺なのだろうか、、、とつい思わずにいられないものです。


しかもその持ち時間というのは、生まれた時代や地域といった、個人ではどうすることも出来ない諸々の条件によって、何をなし得るかということが大きく左右されます。

堀越二郎の生きた時代は暗い世相の破滅へ向かう時期でしたが、そうした抗い得ない条件の中でも、理想を追い求めて抗う姿をもって「生きねば。」ならないと言われている気がしました。「風の中に立つ」ってことかもしれません。


まあ、そんな感じですごく感動してしまったのですが、建築関係トリビアでは、劇中に出てくる「黒川さん」ご夫妻というのが建築家の黒川紀章・若尾文子夫妻がモデルでは、、、とネット上でもちょっと話題になっていました。自分も観ている時に気がつきましたが、顔の印象がそっくりです。。。

裏付けの無い話しではありますが、庵野監督を起用したり黒川さんをモデルにしたりといった点からも「ものづくり」をする人達への賛歌、といった側面を感じることが出来る気がします。

いずれにしてもアニメという表現ジャンルが到達しえたひとつの頂点、とはいえる気がします。



宮崎監督は本作をもって長編映画を引退されるとのことですが、テレビのドキュメンタリーを観ると、70過ぎても作画のチェックやコンテなどでひたすら自分の手を動かし続けていて、ちょっとびっくりしました。監督でありながらも「画工」であり続けるというのは計り知れない負荷がありそうですし、多分にバクチの要素がある映画という興業で300人近いスタッフを食わせる義務を負い続けるのは大変なプレッシャーを受け続けるのだろうとも思います。監督のいうようにアニメの作品をこうした姿勢で高齢になっても続けるのは確かに負荷が高すぎるのかもしれません。。。


宮崎監督のアニメ映画でない次なる「ものづくり」にも期待したいところですが、まずは一ファンとして「人生に影響を与えてくれた良き作品の数々をありがとうございました、そしてお疲れ様でした。」と言いたく、ちょっとブログに書いてみました。